リフレクションした事例の一部を紹介
A氏:70代 男性 妻と二人暮らし(仲良し❤︎)
現役で仕事をしていて、安全靴を着用。年齢的なこともあって、仕事は休みたくないというのが強い希望でした。
もともと腰痛があって某整形外科クリニックに通院中。
巻き爪の痛みを訴えケアを希望されてきました(外来受診)。右母趾内側が陥入爪で滲出液も多め。
抜爪も検討しましたがご本人の希望で他の方法での治癒を目指すことになりました。
タコや魚の目ナシ、目立った既往もナシ。爪切りは自分で実施。
身長体重共にかなり大きな方です(BMI不明)。
フットケア実践看護師とは以前から面識があって、関係性は良好。
●問題(関わったNSご本人が当初感じたもの)
・爪の角が深く切られていて、全体的に深爪
・几帳面で創部を洗いすぎている
・足趾でグーチョキパーができない(趾を動かせない)
●目標:早く傷を直す
●実施した看護
・セルフケア支援;洗い方・保湿指導、安全靴を考慮した日常の創部のケア方法と保護方法指導、テーピング療法
・励まし「Aさんならできる!」
・NS自身がフットケア を学んでいることの自己開示
・医師とのカンファレンスを本人の前で実施
・靴の確認、インソールの調整
*経過としては陥入爪が改善してくると、どこかにぶつけて再び悪化することが繰り返され完治まで4ヶ月ほど要したそうです。
ポイント
▶︎関わっている途中で問題の認識と必要な看護を修正し
「傷を治すこと」⇨「どうしたら陥入爪が再発しないように日常生活を送れるか」と変化。
●看護の修正点は
①看護師のアセスメントの内容を伝える。看護師が何を見てどう考えたか。
②提案したケア方法と期待される効果、提案した理由を伝えた。
③ケアに選択肢があるときはAさんと相談して一緒に決めた。
④Aさんの言葉の意味を正しくとらえるように確認し、再指導するようにした。例えば「ちゃんと洗っている」どう洗っているのが見せてもらったり話してもらったりした。
●結果
・抜爪しないで陥入爪の傷が完治し、再発していないこと
・某クリニック受診中断にならずに完治まで通院し続けることができた
・仕事を休むことなく継続出勤できた
事例を通してご本人の気づき
自分(関わった看護師)は患者さんを元気付けたいそう思っていたことに気づいた。元気になると明るい気持ちにもなって、治療の継続や免疫力向上、治そうという気持ちが強くなることを期待していたのかもしれない。
患者さんの「ちゃんと」は丁寧に確認したほうがいい。「ちゃんと」が各人ごとに違うことに気づいた。多分、「確認すること」は、フットケアだけでなく他でも大切なこと。言葉って大事。
自分がフットケア を勉強していることを伝えたことが、Aさんの「安心」に繋がったように感じる。その理由として「ちゃんとしたケアをしてもらえる」そう期待を高めたのかもしれない。
陥入爪だからといって「薬」が一番ではない。
看護師との時間が設けられたことで(ケア)、Aさんがご自分で実施していたことの評価を一緒に行えるようになった。例えば、「このやり方であっていた」「もうちょっと、こうしたら良かったのかも」などはAさんにとって日常のセルフケアのワンクッションになって安心を高めたのかもしれない。
やっぱり、保清・保湿・保護の基本が大事ですね。
この事例を通して仲間からのフィードバック
途中で目標や関わりの修正を柔軟にされた点が素晴らしい。足の患部に目が向いていましたが、修正を期にAさんと向き合っていることが感じられます。Aさんは、その変化を間違いなく感じ取っていたはずです。良い結果につながったことが嬉しいなと感じます。
継続受診の背景に、Aさんの目の前でのカンファレンスが「信頼している医師が認めているケア」と認識できる環境は患者にとって大きな「安心」の一つとしての意味があったのではないでしょうか。
Aさんと看護師、医師が同じ目標に向かって一緒に歩んでいる様子が伺えます。看護師の変化がAさんの「自分ごと」を皆が一生懸命に関わってくれる姿からエンパワーメントしていたと思います。
「Aさんならできる」励ましは自己効力感を高める4要素の一つです。自分も頑張れる、頑張ろう。その気持ちがセルフケアの質を高め継続に至ったかもしれません。
「ぶつけてしまう」ならば、ぶつけなくて済むように環境整備すればよいことかもしれません。ただ、それが職場などだとすぐに変化できないことがあります。しかし、皆さんがご本人の意向を大切にして「抜爪」以外の方法を考え一緒に取り組んだ姿が、「環境」は変化しなくてもAさんの意識が変わり、結果的に「足をぶつける」ことの減少にまで成果をもたらしたように感じます。Aさんも皆さんもお疲れ様でした。期間が長引くと感染リスクも高くなります。また、「慣れ」から危機感も低下しやすくなる危険性もあります。状態やご本人の意識にもよるでしょうが、ご負担を考慮に入れて温存療法の評価期間をあらかじめ決めておかれると、予め患者さんも伝えられて心づもりになるかもしれないですね。